英語のことわざ
Time and tide wait for no man.
歳月人を待たず。
この諺を「光陰矢のごとし」と同じようにとらえて(つまり時のたつのは速いので、うかうかしてはいられない)いたのですがどうも違うようです。
ネットで調べてみますと出典は陶淵明の漢詩でした。詩の最後の2句に及時當勉勵、歳月不待人(月日は待ってくれないのだから、時に及んでもっと勉強しなさい。)とあり、私の理解していたものとほぼ同じなのですが、その3句手前に 得歡當作樂、斗酒聚比鄰(歓楽の機会があれば大いに楽しみ、近所の人を集めて酒を飲もう。)とあり、意味は「月日は過ぎ去り瞬時も止まらない。だから今の内に酒でも飲んで大いに人生を楽しもう。」
要するに「若い内にバカをやっておこう。」に近い意味のようです。
やっぱり陶淵明はいいこと言うなあ!これから漢詩を読んでみようと思うのですが、漢詩の素養が全くなく、今さら勉強してみようという気持ちがおきないのです。正に「歳月人を待たず」の感なのです。
さて、英語の方の「Time and tide wait for no man.」ですが、これも使い方が違うようです。意味は「月日は待ってくれないのだから、ぐずぐずしないで行動せよ。好機は必ずものにせよ。」とのこと。大分違いますね。
同じ意味の諺として、「Opportunity seldom knocks twice.」(好機は2度と訪れることはない。)、「He who hesitates is lost.」(ためらうものは失敗する。)などがあります。
[語句]
tide:潮の干満の他に、「時流」、「時」の意味があります。Time and tideで韻を踏んでいます。
[出典]
チョーサーのカンタベリー物語、Time flies.(光陰矢のごとし)も同じ出典
[例文]
One afternoon Jack was telephoned by a friend
who offered him a free ticket for the theatre that evening. He did not want to
go, so he declined with thanks. Half an hour later he changed his mind and rang
his friend back, only to be told that the ticket had been given to somebody
else. Time and tide wait for no man.
(意味)ある日の午後、ジャックは友達からその晩公演する芝居の無料チケットの申し出を電話で受けた。彼は気が乗らなかったので、謝意を表して断った。30分後気が変わり電話し直したところ、チケットは他の人にあげたよと言われた。Time and tide wait for no
man.(好機を逸したね!)
[追記]
高校の時、学校帰りに1人でよく食べに行ったたいやき屋さんがありました。5人も入ればいっぱいになるお店で、しっぽまであんこがつまったたいやきがおいしく、お店も結構繁盛していました。40代と思われるおばさんとそれよりも少し若いおじさんが店を切り盛りしていて、(夫婦ではなかったと思います。おじさんがおばさんに対して敬語を使っていたので)おばさんはお客の接待、おじさんはもっぱらバタンバタンとたい焼き機を裏返す係でした。ある日お店に入ると、おばさんもお客さんもおらず、おじさんだけがぽつねんと座っていました。私がたい焼きを注文して待っていると、いつもは無口なおじさんがたい焼き機をバタンバタンさせながら、「僕わね、もうダメだけと、君はしっかり勉強して僕みたいになったらいけないよ。」としきりに私に話しかけてくるのです。私はどう返事したらよいかわからず、あいまいに「はい。はい。」とうなずいたのですが、心の中では、「歳月人を待たずだよ。まだじいさんでもないのに人になんか説教せず、自分で努力すればいいのに!」と思うのでした。
それから帰路を変え一年位してその店の前を通ったところ、もうたい焼き屋さんはありませんでした。